ベルリン、僕らの革命

JUGEMテーマ:映画の感想

  映画『ベルリン、僕らの革命』を観た。貧富の格差が広がる現代ドイツを舞台に、格差の改善を夢見る若者と、資本家の中年男の関係を描く傑作だった。この作品は単に現代の格差という問題を描くだけでなく、若者たちの三角関係の経緯を描く青春映画でもある。
 
 細かいストーリについては説明を省くが、ピーターという青年と、その恋人のユールと、ピーターの親友のヤンの3人が、ある事件をきっかけに資本家を誘拐する。山奥の小屋で人知れず共同生活を営むうちに、4人の間で奇妙な関係が始まった。資本家は、「君たちの理想は分かるが、その行動は間違っている。」と非難する。若者たちは、「働いても働いても、恵まれない人たちがいる!それなのにあんたら金持ちは・・・!」と、ここで現代の経済体制に関する議論が始まり、それも興味深い。しかしそのうち資本家は、「オレにもこんな時代があったなあ。」などと、かつては自分も学生運動で社会体制への不満をぶちまけていたことを、ポツリポツリとほのめかしはじめるのである。

 また若者たちの間でも、ユールとヤンが惹かれあい、ピーターが激しく嫉妬するなど、男2人に女1人という状況によくありがちな展開も始まる。「ヤン、お前ってやつは・・・親友だと思っていたのに・・・!」と男同士のぶつかり合いも始まる。

 この映画のいいところは、というよりどんな映画もそうだと思うが、光や影の効果をうまく利用して、登場人物たちの感情を色彩豊かに表現しているところである。若者たちを非難となつかしさの入り混じった目で見つめる資本家の表情。恋人を親友に奪われた時のピーターの憎しみと絶望に満ち溢れた目。ピーターは最終的には二人を許すのだが、その目は優しさに充ち溢れ、全くの別人のようになっていた。
 
 ソ連が崩壊して16年、アメリカを中心とする資本主義陣営は勝利宣言を出し、もはや社会主義は時代遅れのカビの生えた思想と見なされるようになった。しかし、勝利したはずの資本主義の綻びが随所で見え始め、「グローバリズム」という胡散臭い大義名分も非難の対象となっている。日本でも、弱者切り捨て型の小泉主義、非正規雇用の増加、更には小林多喜二の『蟹工船』が売れ出すなど、資本主義への対抗手段としての社会主義思想が復活し始めている。ドイツでも事情は似ているようだ。

 私は旅先でよくドイツ人に出会う。その時、決まって話題に上がるのが政治経済の話だ。「みんな仕事を求めて西へ逃げ出すために、旧東ドイツは空き家が多い。」だとか、「西から東へ車で入ると、いきなり道路がガタガタになる。」など、東西の格差を憂う話が多い。この映画はドイツ版の『蟹工船』であると言える。

 社会主義思想はカビが生えても、なおその息は絶えていない。映画に出てくる資本家は、「資本主義は正しいことばかりではない。みんな頭では分かっているが、その体制に誰もが知らず知らずのうちに染まっていく。」という主旨のことを述べている。たぶん、私もそのうちの一人なのだろう。                      (仁の作品)



※この記事のURL: http://koshiki.jugem.jp/?eid=140

「パンチレディー」

JUGEMテーマ:映画   


 最近、面白いDVDを見たので、柄にもなく映画評論などというものに挑戦してみたいと思い、久しぶりに更新することにした。
 

 私が見たDVDは、韓国の格闘技映画「パンチレディー」である。これを、格闘技映画と定義づけるのはちょっと無理があるかもしれない。確かに格闘技のシーンは登場するが、映画のメインテーマが今話題の家庭内暴力=DVだからである。
 

 映画は、二つの暴力シーンから始まる。主人公の女性の父親がコソドロを殴っている場面と彼女が格闘家の夫に家庭内暴力を受けている場面である。
 

 久しぶりに再会した元恋人を格闘技の試合で夫に殺されたこの主人公は、こともあろうに公の場で格闘家である夫に挑戦状を叩きつける。
 

 そして彼女の3ヶ月にわたる特訓が始まる。

 映画は、冒頭の過激な暴力シーンから中間部のコミカルなトレーニングシーンそして劇的な試合での対決シーンへと話が展開していき見るものを飽きさせない。
 

 著者は、映画評論の専門家ではなく、武道の専門家なので、武道に携わる者として最後の試合のシーンを分析してみたい。
 

 勿論、ド素人がたった3ヶ月のトレーニングでプロとまともに闘えるとは到底思えない。現実的には少なくとも1年半はトレーニングの期間を設けるべきである。それも一流のコーチについてである。さもなければ致命的な事故が起こりかねない。現に主人公役のト・ジウォンさんは撮影中に手を3箇所も骨折したそうである。例え作りごとではあっても格闘技には危険がつき物だと言うことはこのエピソードからも窺える。
 

 とは言え、この映画の非現実性を批判するのがこのブログの目的ではないので、この部分には目を瞑って話を試合のシーンに戻したい。
 

 まず、第一ラウンド。のっけから夫のカウンターパンチを喰らった彼女は、急に怖気づき観衆のブーイングを浴びながらリングの中を逃げ回り始め、相手を正視することができなくなる。夫は、逃げ回る彼女を猫が捕らえたネズミを弄ぶように甚振り続けていく。このシーンを見て筆者が再確認したのは、一旦恐怖に取り付かれた者が恐怖を克服するのは決して容易なことではない、ということである。
 

 次に、第二ラウンドである。このラウンドでロープに弾き飛ばされた彼女は、突然目を開き、相手をちゃんと見始める。相手をちゃんと見ることにより、相手の技から逃げるのではなく、キチンと相手の技を躱し始める。ことほどさように「相手の動きを正視する」ことは格闘技においては重要なのである。相手の動きをちゃんと見ていれば、相手の攻撃を防御することも、相手のバランスを崩すことも、チャンスを見て反撃することも可能になるのである。
 

 そして、クライマックスの第3ラウンドである。このラウンドが始まって間もなく彼女は3度のノックダウンを喫してしまう。追い詰められた彼女は、所謂「窮鼠猫を噛む」様な状態になり夫の攻撃に一歩も退かず猛反撃を始める。まだこの映画を見ていない読者のために、このラウンドの内容を詳述するのは控え、著者がこのラウンドの格闘シーンを見て一武道修行者として再確認した三つの点について以下に述べさせて頂くに留める。

 〇には、攻撃が最大の防御になり得ること。

 恐怖を克服した人間は、別人のように強くなれるものだということ。

 人間追い詰められると信じられないような底力を発揮するものだということ。

 「パンチレディー」は人生に悩み・絶望している人に限りない勇気を与える映画であり、イジメや家庭内暴力の被害経験のある人にとっては胸を締め付けられるような映画でもある。
 

 最後に、この泥臭い試合シーンを、顔中血だらけのメークと鬼気迫る表情で最後まで見事に演じ切った主演女優ト・ジウォンさんの役者魂に惜しみない拍手を送り、本稿を終えることとする。
 


※この記事のURL: http://koshiki.jugem.jp/?eid=132

薄荷砂糖の味



 韓国映画「ペパーミントキャンディー」を観た。
 シリアスな映画である。
 主演のソル・ギョングの演技がそのシリアスさを一層際立たせている。
 破滅へと向かう男の人生を描いたものだが、「あの頃に戻ってやり直したい」という主人公の言葉には、誰しもが共感を抱くと思う。

 この映画は普通の映画とは違って、時間を逆戻しで展開が進む。
 なぜこの男は破滅へと向かうことになったのか。
 映画のシーンが過去へと進むにつれて、その真相が明らかになってくるのだ。
 その破滅のウラには、韓国の現代史が絡んでいた。
 そもそもの発端は、兵役中に民主化デモも鎮圧するために町へ乗り込んでゆくときに、誤って何も関係のない女子高生を射殺してしまったことだった。
 この舞台は、紛れもなくあの「光州事件」である。
 男の人生の歯車が狂い始める瞬間だった。

 映画の最後のシーンは、1979年、純粋で輝きに満ちた男の青春時代であった。
 仲間たちとピクニックに訪れ、みんなで一緒に輪になって歌うのだ。
 楽しそうなのだが、その歌は男のその後の人生を示しているような歌詞だった。

 「僕はどうすればいいんだ 君が突然消えてしまったら
  僕はどうすればいいんだ 君を失って生きていくのか
  僕はどうすればいいんだ 僕を置いて出て行ってしまったら
  そんなのは駄目だ 絶対駄目だ 行かないでくれ
  
  誰にも知られたくないような秘密でもあるのかい
  情に熱かった君が 優しかった君が・・・ そんなのありえない
  信じられない 出て行くなんて そんな言葉を
  聞きたくない さよならなんて そんな言葉を」

 1977年にソウル大の学生バンドが歌った「僕はどうすればいいんだ」という歌だそうだ。
 男はまさにこの歌の通り、運命に裏切られた人生を歩むことになる。
 これを歌った20数年後、同じ場所で男は自らの命を絶とうとするのである。
 この映画は韓国で大ヒットを記録したそうだが、おそらく同じ世代で韓国の現代史に翻弄された人たちがたくさんいるからなのであろう。
 
 20歳で若々しい主人公はピクニックの場所で、「ここには前に来たことがあるような気がする。」と傍にいた恋人に話す。
 恋人は「それが夢ならいいのに。」と返す。
 何気ないこの会話には、とてつもない皮肉であるように聞こえた。
 
 実際、この映画を言葉で伝えるのは難しい。
 この映画は感想文を書くにはあまりに深すぎたのだ。

 (仁の作品)



※この記事のURL: http://koshiki.jugem.jp/?eid=57

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