消えゆく言葉

JUGEMテーマ:エッセー・紀行文


 昨日の読売新聞に、中国の満州族に関する記事が載っていた。
 消えつつある言語「満州語」を復活させようとする取り組みに関する記事だった。
 大変興味深い記事である。

 満州族とは中国の東北に居住する少数民族で、清朝も満州族の王朝である。
 かつては独自の言語を持っていたが、今では大部分が漢族と同じ漢語(いわゆる「中国語」)を話し、生活習慣もほとんど漢族と変わらないため、民族意識を持つことが困難である。

 読売の記事によれば、満州語を自由自在に話せるのは100人程度の高齢者であるという。
 今、私の研究室にも満州族の男性がいるが、彼も同じようなことを言っていた。
 実際、私は彼が満州族であるということをつい最近知った。
 それほど満州族と漢族の区別は難しい。 

 今回の取り組みは、満州族が独自のアイデンティティを保つために、満州語の授業を小学校で取り入れ、修士課程などで満州語の研究を進める、といったものであった。

 満州語はウラル・アルタイ語に属し、トルコ語、モンゴル語、韓国語(朝鮮語)に近く、その意味では日本語とも近い言語であると言われる。

 そのため、中国語とは全く違う種類の言語である。
 北京の紫禁城などに行くと、漢字の横に満州語の文字で書かれてあったりする。
 四年ほど前、中国吉林省のイートン満族自治県を訪れたときも、役所の看板などに漢字の横に満州文字で書かれてあるのを見かけた。

イートン満族自治県公安局

 このようなことを考えると、満州族自身も自分たちのアイデンティティを保つ取り組みを始めたのはつい最近のことではなく、実はかなり以前から取り組んでいたのではないかと思うのである。
 しかも、以前から取り組んでいたことは取り組んでいたけれども、思ったほど効果が得られなかったのではないだろうか?
 
 かつて中国東北に進出した日本軍は、満州族出身で清朝最後の皇帝・溥儀を傀儡政権に仕立て、「満州国」を作り上げた。
 また日本が撤退した後も、そこにソ連が自国の傀儡政権を作って、中国と直接国境を接するのを避けようとした、という逸話も残っている。
 そのため現在の中国政府は東北の分離独立を警戒し、「満州」という語を避けている。
 実際、満州国のことを「ニセ満州国」と呼び、満州族のことは「満族」と呼んでいる。

 満州族自身が、自分たちの文化を残そうとする取り組みが効果を上げていないのは、想像するに、中国政府の横槍のせいでもあるのではないだろうか?
 今回、読売新聞が取り上げた満州語教育も、おそらく政府を刺激しない程度の細々としたものにならざるを得ない可能性もある。
 今の中国の法律においては、少数民族が独自の文化を保持する権利は建前上認められている。
 しかし少数民族が過剰に自らの文化を主張することは決して歓迎されず、どれだけ少数民族が努力しても国家主席にまで登り詰めるのは難しい状況にあるという。
 満州族が、「漢族政権」である中央政府の「同化政策」とどう折り合いをつけるかが課題となりそうだ。

 閑話休題。
 以上では満州族が漢族に「同化」した、という趣旨のことを書いたが、友人と話していたら、興味深い仮説が出てきたのを思い出した。
 実は漢族こそが満州族に「同化」したのではないだろうか?というのである。
 清朝は250年近く中国全土を支配してきた。
 辮髪も満州族の風習である。

 ということは、今の漢語も、支配者の言語である満州語の影響を大きく受けているのではないだろうか。
 私は満州語を学んだことがないので、実際はどうなのか分からないが、これは研究するに値する仮説ではないだろうか?
 これが事実であるとするならば・・・・・

 満州語や満州族を研究されている方々のご意見・ご批判を仰ぎたい所存である。
                               (仁の作品)



※この記事のURL: http://koshiki.jugem.jp/?eid=22

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