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安全を保障するということ


 (2008年10月 現在)
 アメリカが北朝鮮を「テロ支援国」のリストから外したらしい。それについて日本国内では失望の声が上がっているという。アメリカは日本を見捨てたのか?一概にそうとも言えない。今回はただ「テロ支援国」からのリストから外しただけで、アメリカが北朝鮮と国交と結んだのでもなければ、不可侵条約を結んだわけでもなく、ましてや軍事同盟を結んだわけでもない。にも関わらず、「日本は蚊帳の外」などと素っ頓狂なことを書く新聞まで出る始末で、開いた口が塞がらない。

 かと言って、アメリカが日本を重視しているかと言えば、そうでもない。ブッシュ大統領は、「アメリカは拉致問題を忘れない。」とは言ったが、解決するとは言っていない。むしろ拉致問題を解決するより、テロ支援国のリストから外したほうがアメリカの国益に叶うためであると推測される。その点については拉致被害者家族の横田滋氏も一定の理解を示しているようである。

 そもそも拉致問題の解決とは、何を意味するのか?拉致被害者家族の蓮池透氏によると、「被害者家族の会は、被害者全員が帰ってきたときに解散します。」とのことである。そりゃそうだろうと思う。しかし、いちおう解決した場合、そのあと日朝関係が改善に向かうことも考えにくい。ここまで北朝鮮への敵愾心を増幅させてきた日本社会に、北朝鮮を許す度量があるかと問われれば、それにも大きな疑問がある。

 更に今回のリストからの解除によって、当の北朝鮮は「歓迎」を表明しているが、首脳部にとってはかなり複雑な心境なのではないだろうか?テロ支援国から外れたからと言って、彼らにとってみれば、「だから何?」という感じで、別に彼らの身の安全や体制の維持が保障されたわけでもない。

 要するに今回の措置は、何の効果もなく、ただアメリカが「はい、今度からあんたらはテロリストの仲間じゃありませんよー」と発表しただけのことで、東アジアの政治力学には影響を及ぼさない。では
何故私はこのことをわざわざ文章として残そうとしたのだろう?そこには日本の安全保障への考え方に大きな疑問があったからである。

 かつてから私は現代史に関心を持ち、第二次大戦に関するものや、過去50年の東アジア史の本を読み漁ってきた。第二次大戦の頃と比べて、国際関係や政治力学のパラダイムが半世紀あまりの間に激変したことに驚愕を禁じ得ない。あの当時、誰が朝鮮半島の分断やソ連の崩壊を予言しただろうか?そして、アメリカが日本の安全を保障するなどと誰が想像しただろうか?

 歴史上、日本の安全保障を最も脅かしたのはアメリカだった。3年半に及ぶ戦争で、沖縄や硫黄島を占領し、日本の大都市をほとんど焼き払い、あげくの果てには核兵器を2つも落としていった。かつて仮想敵国であったロシアですら、そこまでしなかったというのに。

 そのアメリカに安全保障を委託するというのも、考えてみれば奇妙な話である。この60年間というもの、安全保障に関しては何でもアメリカあめりかだった。確かに日本の安全を保障する代わりに、基地を置くという選択肢がアメリカの国益に叶うことだっただろうと思う。しかし、アメリカに何もかも頼りっぱなしで、北朝鮮を罵って中国を嘲り、自分たちで問題を解決するという姿勢を忘れてしまっているのではないかと思う。

 最近、金正日国防委員長の体調不良が取りざたされている。サッカーを観戦しただのしてないだの、どうでもいいようなニュースまで流れる始末だが、とりあえず彼の余生もそう長くない。今から6年前の2002年9月17日、長い間否定してきた「拉致疑惑」をついに認め、謝罪した。「素直に謝罪すれば、問題も解決して、食糧難や経済危機にも力を貸してくれるかも。」という将軍様の甘い予想は見事に裏切られた。問題は解決するどころか、ますます肥大化し、ややこしく複雑になるばかりだった。日本へ託すはずだった安全保障は、ついに実現することはなかった。

 今回の措置は、日本にとっても北朝鮮にとってもアメリカにとっても、安全保障とは何なのかを考えさせる良い機会になったと思う。どうすれば国民の財産や生命を外敵から守れるのか?万が一のことが起こったときに、どうすればいいのか?政治家ばかりでなく、国民も考えるべき永遠の課題であると言えよう。             (仁の作品)



※この記事のURL: http://koshiki.jugem.jp/?eid=139

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